海ぶどうは単細胞生物だった!沖縄科学技術大学院大学の研究を紹介

「海ぶどうが単細胞」っていうニュースが出ているけど、

「単細胞ってなに?」

「どうしてあんな複雑な生物が単細胞なの?」

「詳しく知りたい!」

と思いませんでしたか?

 

 

私はこのニュースを見てびっくりしました!

 

 

今回は、「海ぶどうが単細胞だった」という発見をした沖縄科学技術大学院大学、佐藤教授と有本研究員の研究を少し詳しく紹介します。

 

この研究成果は、2019年3月28日発行のDNA Researchに掲載されています。

(誰でもみられるので、気になるかたはアクセスしてみてください)

 

”沖縄科学技術大学院大学”という名前をはじめて聞いた人も多いのではないでしょうか?

 

 

2019年に新しいNature Indexの指標でトップ10入りした「スゴい大学」なんですよ!

 

「海ぶどうが単細胞だからってなんの役に立つんだ?」

と思ったあなた!

 

 

この発見は今後の生物の「進化」に関する研究で重要な役割を担うこと間違いなしの偉大な発見なのです。

 

 

その偉大な発見の一部をわかりやすくご紹介しようと思います。

 

 この記事は、2019年6月号の日経サイエンスの「じつは単細胞 海ぶどうの謎」を参考にしています。
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海ぶどうってなに?単細胞生物ってなに?

海ぶどうってなに?

海ぶどうは大きく分けると藻類の仲間です。

もっと細かく分けると緑藻に分類されます。

(教科書に出てくるミカヅキモとかアオミドロの仲間です)

 

 

私たちがお目にかかれる食用に出回る海ぶどうは養殖で、全長10cm~20cmです。

 

 

自然のものは1mを越す場合もあります。(意外と大きい海藻なんですね!)

 

 

陸に生えている植物と同じように根・茎・葉に相当する部分があります。

佐藤教授らの論文より引用)

 

とてもじゃないけど、1つの細胞でできているようには見えませんよね?

単細胞生物ってなに?

単細胞生物とは、簡単にいうと1つの細胞だけからできている生き物のことです。

細菌や、遺伝子が核膜に包まれていない原生動物(アメーバ、ゾウリムシ、大腸菌など)、遺伝子が核膜に包まれている真核生物では酵母や藻類が単細胞生物です。

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海ぶどうは単細胞で多核の細胞

どうやって調べたの?

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の佐藤教授と有本研究員は、次世代シーケンサーを用いて、海ぶどうの全ゲノムを解読しました。

遺伝子とは?
19世紀後半に、グレゴール・ヨハン・メンデルがエンドウマメを使った実験で遺伝の法則を発見しました。
その当時はなにかの因子(element)ー現在の「遺伝子(gene)」ーが、親から子に伝わるということはわかっていました。
その後、遺伝子は細胞の核の中の染色体の中にあることがわかってきました。
染色体はタンパク質とDNAでできていて、遺伝子の正体がタンパク質か?DNAか?という議論が湧き起こりました。
1944年にオズワルド・アベリーによって遺伝子の正体がDNAであることがわかりました。
1953年にワトソンとクリックによってDNAの立体構造が二重らせんであることが解明されました。
では遺伝子とDNAはどう違うのでしょうか?
DNAという大きな集合体の中に遺伝子があるというイメージです。
生物が生きていくために必要な働き(機能)を持ったDNAの一部を「遺伝子」と言います。
DNAは「デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)」という物質の名称で、機能を持っているか持っていないかは関係なくDNAと呼びます。
DNAは4種類の塩基(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン)から構成されていて、この4種類の塩基の並び方(塩基配列)が遺伝情報になります。

 

ゲノムとは?
ゲノムとは、DNA全ての遺伝情報のことです。
遺伝子(gene)と染色体(chromosome)を合わせた造語で、染色体に含まれる全ての遺伝子の塩基配列の情報のことをゲノムと呼びます。

 

次世代シーケンサーとは?
2000年代半ばにアメリカで開発された、遺伝子の塩基配列を素早く読める装置のこと。
Next Generation Sequencer:NGSと呼ばれています。
ゲノムを短時間で解析することができるようになったので、自然科学分野の研究が飛躍的に進むようになりました。

 

海ぶどうのゲノムサイズは約2800万塩基対で、単細胞緑藻であるクロレラの4600万塩基対よりも小さかったのです!

 

 

ちなみにヒトのゲノムサイズはどれくらいだと思いますか?

ヒトのゲノムサイズは約30億個と言われています。

 

 

海ぶどうの遺伝子の数は9311個ということもわかりました。

 

 

単細胞なのに複雑な形をしている”なぞの鍵”はこの9311個の遺伝子がにぎっているのではないかと考えられました。

多核の細胞ってどういうこと?

多核というのは、1つの細胞に遺伝子を包んでいる「核」が複数あるということです。

 

理科の教科書で一般的に描かれている細胞の絵には、核(通常赤色で描かれている)が1つですよね?

 

でも生物の中、とくに菌類や藻類のなかまでは核は分裂するけど細胞は分裂しないという現象がよく起こるのです。

 

 

そのために1つの細胞の中に、核がどんどん増えていく…つまり多核の細胞になるのです。

 

 

ちなみにヒトにも多核の細胞はあるんですよ?

それは、「筋肉」の細胞です。

筋肉の中でも骨格筋の細胞には核がたくさんあることが知られています。

(大きい細胞では100個以上あるとも言われています)

筋肉の細胞の場合は、核分裂ではなくて細胞がくっついて一つになることによって核が増えていきます。

 

 

この「多核」の状態が、海ぶどうの複雑な構造を作り出す大切なヒントになっているようです。

 

 

ではどのようにして、海ぶどうは根・茎・葉の形を変えているのでしょうか?

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海ぶどうからわかる「進化」の謎

海ぶどうはどうやって根・茎・葉の形を変えてるの?

佐藤教授らが9311個の遺伝子を調べてみると、海ぶどうは核膜の物質輸送に関わっている遺伝子が他の緑藻に比べて多いことがわかりました。

核膜とは?

核はDNAを入れている大きなボールのようなものです。ボールの表面の膜が核膜です。
核膜にはたくさんの穴(核膜孔)が空いていて、いろんな物が出入りできるようになっています。
でもなんでもかんでも通すわけではなくて、核膜の穴の周りの「物質輸送タンパク質」が通して良いか悪いかを判断しています。
核を会社、核膜孔がドアだとすると、ドアの隣にガードマンがいて入ってくる人、出ていく人をチェックしているという感じです。
「株式会社海ぶどう」は契約している警備会社が他の会社よりも多くていろんな制服を着たガードマンがそれぞれのドアに立っているというイメージで良いかと思います。
(ちなみに核膜から外に出ていくものとしてはRNAが挙げられます)
これは、「DNA→RNA→タンパク質」という基本原則(セントラルドグマ)を理解しておくとわかりやすいかと思います。

 

この核膜の物質輸送に関わる遺伝子が、葉と茎で発現の仕方が違っていました。

 

 

つまり「核から出てくるRNAの種類を変える」ことが葉と茎の構造を変えるのに重要なのではないかと佐藤教授は考えています。

 

 

でも核がどうやって自分の位置を認識して、遺伝子の発現を変えているのかはまだわかっていません。

海ぶどうの発見から植物の「進化」がわかる

海ぶどうの遺伝子を調べてみると、他の緑藻に比べて核膜の物質輸送に関わる遺伝子が多かったり、遺伝子の発現を調整する遺伝子(転写因子)の種類が多いということがわかってきました。

 

(ホメオボックス遺伝子のうちのTALE型と呼ばれる遺伝子の種類が多様化していました)

 

 

このTALE型のホメオボックス遺伝子は、陸上植物(多細胞の植物)でも多様化していることがわかっています。

 

 

有本研究員は、海ぶどうのTALE型遺伝子の多様化と陸上植物のTALE遺伝子の多様化は深くつながっているのではないかと考えています。

 

 

植物がどのように進化してきたのか、その原則を海ぶどうが教えてくれるかもしれません。

 

 

今後、沖縄料理店などで海ぶどうを見かけたら「これ、1つの細胞からできてるんだよ」というウンチクを傾けるのも良いかもしれませんよ。

 

ちなみに、沖縄科学技術大学院大学の学食には海ぶどうがたくさんのった、海ぶどう丼があるらしいですよ!

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