組織染色の基礎のキ!「HE染色」の原理
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生命科学系の多くの研究室(特に哺乳類を扱う研究室)では、必ずと言って良いほど組織染色をやらされます。

というのも、標的の組織がどうなっているのか視覚的にはっきり見やすく手軽に行えるのが組織染色だからです。

研究室だけではなく、医療の現場でも病理解析のために組織染色は良くやられているようです。

ちょっと前のドラマですが、「ブラックぺアン」では手術中に組織を取り出して「術中迅速病理検査」をするシーンが出てきたり、カンファレンスの時に患者さんの組織染色像が映し出されていたりしていました。

組織染色にも種類はたくさんありますが、その中でも基礎の基礎といっても良いのが、「HE染色」なのではないでしょうか?
(論文を読む時に、病理を見ている論文なのにHE染色を1つもやっていないものは「大丈夫か?」と疑って読んでいたりします。)
今回は基礎の基礎だからこそ、あまり知らないことが多い「HE染色」について少し掘り下げてみましょう。

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HE染色とは?

Hematoxylin-Eosin染色(ヘマトキシリン・エオジン染色液)

組織の形態を観察する目的で、細胞核、細胞質を染色する方法。

細胞と組織の構造の全体像を把握するために行います。

(細かいことは見られないけど、ざっくり組織がこんな風になっているというのをみるのに使う染色法です。)

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HE染色の染色の仕組み

ヘマトキシリンやエオジンの色素と組織成分がイオン結合を形成するため染まって見えます。

ヘマトキシリン

メキシコやアメリカ大陸に生息するマメ科のHematoxylon campechianumから抽出して得られる色素。

無色の結晶で水に溶けにくく、熱湯やアルコールに溶けやすいという特徴を持ちます。

酸化するとヘマテインと呼ばれる染色液有効成分になるので、染色液を作る時にはヘマトキシリンに酸化剤を加えて人工的に酸化を促進させています。

ヘマテインは単独では染色性はなく、正に荷電しているイオン(金属イオン)があると錯体を形成して塩基性色素となり染色できるようになります。

ヘマトキシリン染色液は正に荷電するため、組織の中で負に荷電している成分とイオン結合して(青く)染まる

特に核のヒストンとの酸化反応により、青いヘマテインを生成します。

このことから想像できるように、組織の中でもヒストンが多く存在する細胞核が染まります。

核のリン酸基が負に荷電するようにpHを調節するのが良い染色を得られるポイントです。

(ヘマトキシリンのpHが低い(正に荷電させてあげる)方がきれいに染まるようです。)

 

きれいな染色を得られなくなる原因として、ヘマトキシリンの酸化不足、過剰酸化が挙げられます。

(要は古い染色液は過剰酸化になっているので使わない方が良いということ)

 

ヘマトキシリンには大きく分けて2種類あります。それぞれの特徴を見てみましょう。

  • 多量のアルミニウム塩もしくは酸を含むもの(マイヤー、リリーマイヤーなど)
    核を選択的に染めます。「進行性染色液」に大別される。
    染めた直後は標本全体が赤紫色になる。流水で洗い流すことで青紫色に変わります。
    一般的によく使われている「マイヤーヘマトキシリン」は核はキレイに染まるが薄く染まるという特徴があります。
  • 比較的中性なもの(デラフィールド・ハリス・カラッチ・ギルなど)
    核以外の細胞質も染色される程度に強く染める。「退行性染色液」に大別される。
    1%塩酸/70%アルコールなどを用いて核だけを染め残す。
    ハリスヘマトキシリンは水銀が入っているため、現在はほとんど使用されなくなりました。

臨床の現場ではヘマトキシリンの特徴を使い分けて染色を行っているようですが、実験室レベルではマイヤーヘマトキシリンだけ知っておけば十分だと思います。

 

エオジン

エオジン染色液は負に荷電しているので、組織の中で正に荷電している成分とイオン結合して(ピンク)染まります

エオジン染色液を適切なpHにすることで、細胞質のタンパク質をきれいに染められます。

つまり良い染色を得るためには、pHをきちんと調整したもの(調整は難しい場合は新鮮なもの、適切に保存されているもの)を使うのが良いでしょう。

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HE染色の手順

パラフィン切片の場合は脱パラして再水和する。凍結切片の場合は30分程度風乾すれば固定される。

(パラフィン切片と凍結切片の違いについてはまた別の記事でまとめます)

基本的な手順なので細かい部分は研究室によって異なるかもしれません。

ヘマトキシリン(5〜10分)

流水水洗(10〜15分)

エオジン(30秒〜3分)

水洗

脱水(70%エタノール→90%エタノール→100%エタノール 各3回ずつ)

透徹(キシレン3回)

封入
凍結切片ではエオジンは数十秒、パラフィン切片では数分反応させたりします。
また、切片の厚さによってもプロトコルの見直しが必要だったりしますので、まずは基本のプロトコルで染色して検鏡してみるのをおすすめします。

透徹を行う理由

キシレンなどで透徹を行う理由は大きく2つあげられます。

  1. 封入剤と組織の親和性を高めるため
    多くの封入剤は有機剤で水と親和性を持ちません。
    エタノールは有機溶媒とも溶け合いますが、水との親和性が非常に高く水を吸収してしまう性質があります。
    染色剤は主に水やエタノールに溶けやすい性質があるので、エタノール存在下で封入してしまうと退色の原因にもなってしまいます。
    そのためエタノールを取り除き、有機溶媒であるキシレンに置換する手順が必要なのです。
  2. 脂質と水分の屈折率を合わせるため
    組織中に脂質の部分と水分の部分があると、光の屈折率が異なるためうまく検鏡ができません。
    キシレンに漬けて組織中の脂質を溶かして組織中の光の屈折率を揃えることで、切片の観察が可能になります。

最近はキシレンではなく代替品も出てきていますが、透徹を行う理由は同じです。

きちんと行うようにしましょう。

HE染色の原理 まとめ

HE染色についてまとめておきます。

  • ヘマトキシリンは細胞核を青く染める
  • エオジンは正に荷電している、細胞質のタンパク質などをピンクに染める
  • 染色手順は研究室で行われている基本のプロトコルにしたがって一回染めてから最適化していく

 

ただ手順だけ追うのではなく、どうしてこのステップをするのか?(例えば、ヘマトキシリンの後に流水で流すのはなぜか?)を考えることで実験の理解が深まるのではないかと思います。

どのような原理かがわかっていると、うまく染まらなかったときのトラブルシューティングがしやすくなるので、きちんと知っておくことは大事ですね。

 

組織切片には凍結切片とパラフィン切片があります。2つの切片の違いを下記の記事にまとめています。

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