免疫染色の基礎知識〜いろいろな染色法
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研究室で「めんせん」「メンセン」と言われる免疫染色。

「抗体の特異性使って抗原を検出、抗原の局在を観察する手法」で、細胞や組織のタンパク質の局在を見るのによく用いられます。

様々な染色法があるのもこの実験の特徴。

抗体に蛍光色素を結合させた蛍光抗体法や酵素反応を利用して検出する酵素抗体法が主に用いられます。

また、抗原を認識する抗体に標識をつけて直接検出する直接法や、抗原を認識する抗体を認識する抗体(二次抗体)に標識をつけて検出する間接法があります。

この記事では、免疫染色の代表的な染色方法についてまとめていきましょう。

 

免疫組織化学染色(IHC:Immunohistochemistry)と免疫細胞化学染色(ICC:Immunocytochemistry)の違いについてはこちらの記事をご覧ください。

 抗原-抗体反応を使ってタンパク質を可視化する手法としてWestern blotもありますが、この記事では「局在を見る」方法についてまとめています

 

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免疫染色の歴史を振り返る

色々な実験手法は、研究者の試行錯誤によって生まれてきます。

免疫染色も様々な研究者によって、改良が重ねられて確立されてきました。

少しだけその歴史を振り返ってみましょう。

 

1950年 ハーバード大学のAlbert H. Coonsらが蛍光抗体法・直接法を報告

COONS, A. H., & KAPLAN, M. H. (1950). Localization of antigen in tissue cells; improvements in a method for the detection of antigen by means of fluorescent antibody. The Journal of experimental medicine91(1), 1–13. https://doi.org/10.1084/jem.91.1.1

1966年 Paul K. Nakaneらがペルオキシダーゼを使った酵素抗体法を報告

Nakane, P. K., & Pierce, G. B., Jr (1966). Enzyme-labeled antibodies: preparation and application for the localization of antigens. The journal of histochemistry and cytochemistry : official journal of the Histochemistry Society14(12), 929–931. https://doi.org/10.1177/14.12.929

1970年 Ludwing A. SternbergerらがPeroxidase-anti-Peroxidase Cmplex(PAP)法を報告

Sternberger, L. A., Hardy, P. H., Jr, Cuculis, J. J., & Meyer, H. G. (1970). The unlabeled antibody enzyme method of immunohistochemistry: preparation and properties of soluble antigen-antibody complex (horseradish peroxidase-antihorseradish peroxidase) and its use in identification of spirochetes. The journal of histochemistry and cytochemistry : official journal of the Histochemistry Society, 18(5), 315–333. https://doi.org/10.1177/18.5.315

1981年 Su-Ming HsuらがAvidin-Biotin-Peroxidase Complex (ABC)法を報告

Hsu, S. M., Raine, L., & Fanger, H. (1981). Use of avidin-biotin-peroxidase complex (ABC) in immunoperoxidase techniques: a comparison between ABC and unlabeled antibody (PAP) procedures. The journal of histochemistry and cytochemistry : official journal of the Histochemistry Society, 29(4), 577–580. https://doi.org/10.1177/29.4.6166661

技術の確立は1950年〜1980年代にかけて行われてきた手法です。

 

免疫組織“化学”染色と“化学”が入る場合は、酵素反応を含む酵素抗体法のみを指すとする人もいます。

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検出抗体よる分類〜蛍光抗体法か酵素抗体法か

免疫染色の基本は、「抗体を使って目的のタンパク質を標識し組織や細胞のどこに局在するかを可視化する」です。

この「可視化する」方法は、検出抗体に蛍光標識をつけた蛍光抗体法と酵素反応を利用して検出する酵素抗体法に分けられます。

(その他にも金属標識を利用した金属標識抗体法もありますが、一般的な研究室で使われていないので割愛します。)

蛍光抗体法とは?

1950年にCoonsらによって最初に報告されました。

その後改良が重ねられて解像度やS/N比が高い染色として、現在一般的に用いられている方法です。

S/N比とは?
信号(signal)とバックグラウンドの明るさ(noise)の比。S/N比が高いほどその画像がクリアであり、観察像の質の指標となる。(オリンパスHPより

 

標識物質としては、FITC(緑色)やRITC(赤色)、Cy、Alexa系の色素がよく用いられ、蛍光顕微鏡・共焦点顕微鏡で観察します。

 

酵素抗体法とは?

ペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリホスファターゼ(AP)などの酵素を標識した酵素を用いる。

蛍光抗体法と異なりで電子顕微鏡でも観察ができるのが特徴。

PAP法やABC法、LSAB法(Labeled streptavidin biotylated antibody method)、TSA法(Tyramide Signal Amplification)など、感度を上げる方法が現在でも様々に開発中です。

 

HRPを使った時の発色基質はDAB(3,3'-ジアミノベンジジン)で、茶色から黒色で発色します。

DABによる発色原理はこちらの記事にまとめています。

 

蛍光抗体法と酵素抗体法の違いをまとめます。

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抗体反応による分類〜直接法・間接法・増感法

現在の研究室では主に蛍光抗体法では間接法、酵素抗体法では増感法が用いられます。

 

直接法・間接法についてまとめておきます。

直接法

直接法は、標識物質を標識した一次抗体を使用する方法です。

抗原抗体反応が一回だけのため、操作が簡単で短時間で作業できます。

しかし標識物質を標識した一次抗体が市販されているとは限らないため汎用性が低いことが欠点。

 

間接法

ほとんどの研究室で行われているのが、間接法です。

なぜなら一次抗体の宿主が同じであれば、別の標的タンパク質を検出したい場合に同じ標識二次抗体を使用することができるため、非常に汎用性が高いからです。

また、二次抗体により直接法に比べて増強されたシグナルを得られ感度も上がります。

 

しかし抗原抗体反応が2回あるため直接法よりも時間がかかり、二次抗体による非特異的染色が起こる場合があります。

非特異染色が起こっていないかどうかを確かめるために、必ずネガティブコントロールとして二次抗体のみのサンプルを準備する必要があります。

 

直接法・間接法・増感法についてまとめます。

 

参考文献

渡部顕章,蛍光抗体法と酵素抗体法の比較 ,免疫染色玉手箱,https://www.nichirei.co.jp/bio/tamatebako/pdf/tech_17_watanabe.pdf

痛みと鎮痛の基礎知識 組織ー免疫組織化学染色

ThermoFisher SCEINTIFIC  IHC免疫検出

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