核染色で使うDAPIとヘキスト(Hoechst)の違いを説明できますか?

生命科学系の実験で必ずと言って良いほどやるのが、細胞の染色です。細胞を染色するときに必ず行う核の染色。

核の染色でよく使われるのはDAPIHoechstですが、その違いをあなたは説明できますか?

核を染色するときに何気なく使っている、染色試薬ですが「どうして」その試薬を使うのか、ちゃんと理解して説明できるようになっておくとより実験を深く理解できるのではないかと思います。

核染色をするとき、どんな条件で核をラベリングするか(生細胞なのか死細胞なのか)?DNAとRNAをどの程度明確に区別したいのか?によって選択する蛍光色素が変わってくるのです。

この記事では核染色の代表格といえるDAPI染色とHoechst染色の違いについてまとめておきます。

(他にも核を染色する方法は色々ありますが、実験室でよく使われる2つについてまとめます。)

DAPI染色

DAPI(4’,6-diamidino-2-phenylindole)はDNA二重鎖の副溝(minor groove)と結合して、Adenine-Tymidineが富む領域に高い結合性を持つ。

紫外線によって 励起(励起波長:358 nm)して、青色の蛍光を発する(蛍光波長:461 nm)。

膜透過性はあるものの浸透速度が遅いため、主に死細胞を染色に使用される

RNAにも結合性を持つが、RNAに結合した場合、蛍光波長が500 nm前後となり、蛍光強度も小さくなるのでRNAの観察には向かない。

励起波長って何?蛍光波長って何?と思った方は、下記の記事も合わせてお読みください。

DAPIを使った固定細胞の核染色

DAPIやHoechstはUV照射により青色の蛍光を発します。

これはAlexa試薬などと蛍光波長が離れているため、免疫染色などの共染色にもよく用いられます

固定した細胞の核の染色方法について、簡単にまとめておきましょう。

DAPIストックの作製(1 mg/mL)
(水に溶解する)

0.1 μg/mLになるようにPBS(-)で希釈(1/10000倍希釈)

二次抗体染色後・ブロッキング後の固定細胞に加える

室温で5分程度incubate

DAPI染色液を除去

蛍光観察

DAPIは固定した細胞の核染色以外にも、培養細胞中のマイコプラズマやウィルスの検出などにも使用されます。

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ヘキスト(Hoechst)染色

Hoechstはその後に番号が色々ある33342や33258、34580など。元々はHoechst社によって製造され、開発番号がついている。

Hoechst33342、Hoechst34580は類似した励起ー蛍光スペクトルを持っている。(励起波長:350 nm程度、蛍光波長:461 nm)

結合する部分はDAPIと同じで、DNAの副溝Adenine-Tymidineを富む部分に結合する。DAPIに比べて毒性は低い。

RNAへの結合性は非常に弱い。

細胞透過性が強いので生細胞の核を染色によく用いられる

 

Hoechstを使った生細胞の核染色

生細胞の核染色を行うことでどんなことが可能になるのでしょう?

一番の目的はライブイメージング。細胞の核はDNAを貯蔵し、細胞分裂や遺伝子発現制御を担う重要なオルガネラの一つです。核の生命活動におけるダイナミクスを観察することは、生命現象を知る一つのカギともなりえます。

Hoechstストックの作製(10 mg/mL)
(水への溶解度が低いので超音波処理をして溶解)

5 μg/mL(0.1-12 μg/mLの濃度幅で使われる)になるようにPBS(-)で希釈(1/2000倍希釈)
(培養液で希釈すると蛍光が弱くなるので注意が必要)

培養皿の培養液を除去する

Hoechst染色液をdishに加える

37℃で10分程度incubate

ヘキスト染色液を除去し、PBS(-)で3回wash

蛍光観察

HoechstとBrdUを使った細胞周期の観察

アポトーシス細胞における凝縮濃縮核の区別、ブロモデオウリジン(BrdU)と合わせて細胞周期の研究にも使われる。

BrdUとは?
合成核酸アナログ。[H3]-Tymidineと同様に細胞周期のS期における複製中のDNAに取り込まれ、分裂細胞と娘細胞を表式することができる。HoechstはBrdUにが取り込まれているAdenine-Tymidineに結合しても蛍光を発色しない。

DAPIとHoechstの違い まとめ

実験室で主に使われる、DAPIとHoechstの違いを見てきました。類似点と相違点をまとめておきましょう。

  • (類似点1)
    DNAの副溝のATリッチな部分に結合して蛍光を発する
  • (類似点2)
    励起波長が350 nm程度、蛍光波長が460 nm程度の青い蛍光を発する
  • (相違点1)
    細胞膜の透過度がHoechstの方が高い。
    DAPIは固定細胞染色、Hoechstは生細胞染色に用いられることが多い
  • (相違点2)
    毒性はHoechstの方が低いとされている。

核染色はDAPIやHoechstだけではなく、オレンジ色の蛍光を発するエチジウムブロマイドや赤色の蛍光を発するPI、緑色の蛍光を発するアクリジンオレンジなどがあります。

用途に合わせて、どの試薬を使うのか選択できるようにしておきましょう。

普段何気なく使っているDAPIやHoechst。

どういう用途で核を染色したいのか?をよく考えてから実験するようにすると、実験への理解がより深まるのではないでしょうか?

核染といえばDAPIと判を押した様に使っている人が多いのではないかと思います(私はその一人でした)。

「先輩が言っていたから」「先生がそうしろって言っていたから」ではなく、自分の中の「どうして?」を意識して実験に取り組んでいきましょう!

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