「生物学」と「生命科学」の違いを説明できますか?
先日、Twitterを見ていたらタイムラインに面白そうな本の紹介のツイートが流れてきました↓。
七夕🎋の本日めでたく発行となりました!⭐️
『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』
(石浦章一/著)生命科学を学ぶ本質は自分の健康や地球上の生命に思いをはせること。
本書がそのきっかけになることを切に祈っていますhttps://t.co/c3KdsQlmEZ pic.twitter.com/iOOP9IHXWG— 羊土社 教科書編集部@Stay’s Anatomy運動器編発売中 (@Yodosha_text) July 7, 2021
気になった本のタイトルは『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』。
「生命科学」ってなんでしょう?
早速、手に入れて読んでみたのでそのレビューをしていきます。
“小説みたいに楽しく読める”ってなに?
『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』とは、どんな本なのでしょう?
著者は、石浦章一先生。
東京大学大学院総合文化研究科教授を退官されたあと、同志社大学で特別客員教授をされていました。
『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』は、同志社大学で1,2年生文理向けの生命科学講義をまとめたものです。
2021年7月に羊土社から出版されました。
“小説みたいに楽しく読める”ってなんだろう?どんな本なんだろう?と思って手に入れてみました。
個人的なことですが、著者の石浦先生の研究室は私が大学院の時に研究室が同じ建物だったんです。
有名な先生が身近な存在に感じられる経験って良いですよね。
普通の生命科学の教科書と全然違う!
読んでみて最初に思ったのは、「普通の生命科学の教科書と全然違う!」。
普通、生命科学の教科書はThe CELLのように、文字が小さくて絵が書いてあるけど内容を理解するのに一苦労するものだと思います。
読むのに時間がかかるし、全部の分野を網羅するのはかなり難しい...
それに対して『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』は、石浦先生の雑談的なものが主体で、読んでいるだけで先生の講義を受けているかのような感じがしました。
生命科学でわかっている現象の説明は最小限で、そこから何がわかるか?どう言うことが実際に行われているか?と言う話がメインになっています。
生命科学の専門的なことに関しては、専門用語がほとんど使わずに平易な言葉で書かれていました。
学部1,2年生、しかも文理向けなので既に生命科学の専門の勉強をしている人には少し物足りないかな?と思ったのですが、そんなことはない!
生命科学分野を進化から始まって遺伝、DNA鑑定、再生医療、ゲノム編集といった最新技術まで網羅して、しかもデータの見方など普通の大学の講義ではやってくれないようなことまで書かれています。
特に印象的だったのは、所々に『問』という欄があって、実際に行われた研究や事象に関して「皆さんはどう考えますか?」と読者に問いかけるところ。
考えてみて、次に行くと「やっぱりこうだったのか!」とか「こうじゃなかったんだ!」など、自分で考えた事柄に対してより深く思考できるのがこの本ならではと言う感じでした。
生命科学分野の最新事情に対しても深掘りされているので、既に専門の勉強をしている、3,4年生、修士・博士課程の学生さんにもおすすめです。
生命科学でツタンカーメンの母親を特定する
『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』の中で一番印象的だったエピソードをご紹介します。
「エジプト分子学」という分野があるんです。
エジプト文明は今から5千年近く前から始まります。
そして、代々の王様はミイラと言う形で王家の墓に葬られてきました。(ピラミッドなどは有名ですね)
黄金のマスクで有名なツタンカーメンを知っていますか?
実は、ツタンカーメンのお母さんは誰だったか?わかっていなかったそうです。
そこで、DNA鑑定の技術でマイクロサテライト解析を行ったところツタンカーメンのお母さんがこの人ではないか?と言うことがわかったのです。
さらに、ツタンカーメンは兄妹結婚でできた子どもだったと言うことまでわかってしまったのです。
(詳しくは、本を読んでください)
まさか、自分がやっている分野とエジプト文明が繋がっているなんて思ってもみませんでした。
しかも、有名なツタンカーメンのお母さんは誰だかわかっていなかったこと、それをマイクロサテライト解析で誰だか特定してしまったことは読んでいて驚きの連続でした。
DNA鑑定に関する倫理的な問題まで触れられているので、少しでも興味が沸いたら手に取ってみることをおすすめします。