査読つき論文ってなに?
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通常、学術論文はどのようなステップを踏んで世の中に公開されるのでしょうか?

論文を投稿する過程の中で、重要なステップとなる「査読」について簡単にまとめていきましょう。

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査読とは?

査読は英語で「peer review」と言います。

「peer」は英語で「同等の人」「同僚」などの意味があります。

同等の立場の人が評価・審査することを「査読(peer review)」というのです。

 

学術論文を投稿するときの「査読」とは、

著者と同じ分野の研究者(2~4人)に、投稿先の論文雑誌にその論文を載せる価値があるかどうかを評価してもらうステップのことです。

「査読」のステップを踏むことで、掲載論文の質が高くなり、論文雑誌の信頼性も高くなります。

つまり、論文雑誌の質を保つために「査読」が行われるというわけです。

 

査読の始まり

昔は、論文を投稿すると投稿先の雑誌の編集者(エディター)が論文の内容を評価して掲載するかどうかを決めていました。

科学技術の進歩によって

・ 学問の専門が細かく分かれて行ったこと

・ 論文数が飛躍的に増加したこと

ため、編集者ではなく各分野の専門家に見てもらう(査読してもらう)という流れが出てきました。

 

査読は各分野の専門家にしてもらいますが、論文を掲載するかどうかは編集者が決めています。

 

査読の種類

現在行われている「査読」は、大きく4種類に分けられます。

  1. シングルブラインド
    著者は誰が査読しているかわからない。査読者は誰が著者か分かる状態で査読する。
    一般的な生命科学系の雑誌の査読はこの形式を取っている。
  2. ダブルブラインド
    著者は誰が査読しているかわからない。査読者も誰が著者か分からない状態で査読する。
  3. オープン・ピアレビュー
    著者・査読者とも相手が誰かが分かる状態で査読する。
  4. 出版後査読
    論文出版後に研究者仲間が論文の内容をウェブ上で査読する活動のこと。
    2001年に初めて導入されたシステム。
    2-3人にしか評価されない従来型の査読とは異なり、多数の研究者たちがその研究を評価できる。

 

査読者ってどうやって選ばれるの?

投稿された論文の分野と同じ分野の研究者が2〜4名程度、論文雑誌の編集者によって選定され、査読の依頼を受けます。

論文の著者・所属機関との独立性を重視して選ばれるようです。

 

論文投稿時に、著者が希望する査読者リストを提出したり、相応しくない査読者(研究の競争相手)をまとめたリストを示すこともあります。

提出されたリストをもとに、編集者が査読者を選定することが増えてきています。

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査読つき論文とは?

査読を通過した、信頼性の高い(とされる)論文のこと。

論文の質としては、査読を受けないで掲載された論文よりも査読つき論文の方が(同じ分野の研究者の客観的評価が入っているため)高く評価されます。

 

また、研究者の業績は査読つきの論文の本数で判断されます。

学位審査やポストの獲得、昇進するかどうかも査読つきの論文が何本出ているかで変わってしまうのです。

 

「査読」による評価の種類

「査読」を受けると大きく分けて下の4種類の評価が下されます。

 

  • accept(採択)
    そのままの状態で論文掲載可能。
    一発で「accept」されることはなかなかありません。
  • minor revision
    若干の修正ののち論文掲載可能。
    言語面の訂正など、多少の修正を加えて再提出する。
    数週間〜1ヶ月程度の期間を設けて、再提出が求められる。
  • major revision
    追加実験を含めた大幅な修正が必要。
    3ヶ月〜半年の期間を設けて再提出が求められる。
    再提出後、再び追加実験が必要とされる場合はrejectとなるケースが多い。
  • reject(不採択)
    論文の掲載されない。
    査読者により理由が記載される場合が多い。
    Natureなどの大手の雑誌はrejectの判断が非常に早い。

「査読つき論文」という折り紙をもらうためには、長い道のりを歩まなければならないのです。

「査読」をする際に見られていること

・論文の内容に矛盾がないかどうか

・論文雑誌に掲載して、多くの人に見てもらう価値があるかどうか(新規性・インパクトがあるか)

・論文雑誌の規定の水準をクリアしているかどうか(投稿規定に従った書き方をしているか)

 

これらの基準に則って、acceptにするか?revisionに回すか?rejectにするか?が決められます。

そのほかにも、その雑誌に内容が合っているかなども判断基準となる場合があります。

「査読」のデメリット

論文の質を保つために導入された「査読」のシステムですが、デメリットもあります。

  • 出版までに時間がかかる
    編集者が査読者を選定して、査読者が査読(1〜2週間程度)、編集者が査読結果を見て評価を投稿者に伝える。
    という複数のステップを踏むため、掲載までに時間がかかってしまう。
    査読を受けている間に、競争相手に先をこされてしまう可能性もある。
  • 判断が査読者に依存するためバイアスがかかりやすい
  • 盗作・盗用される可能性がある
  • 利益相反の恐れがある
  • 査読者の労力・時間などの見えないコストがかかる
    査読者は無償で査読を引き受け、謝礼が支払われることはほとんどない。
    研究の仕事などもありながら査読を強いられることから、査読を引き受けたがらない研究者も多い。
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査読つき論文ってなに? まとめ

査読つき論文について、最後にまとめておきます。

  • 同じ分野の研究者がその研究を評価することを「査読」と言う
  • 論文査読の場合は一般的に査読者が複数人、雑誌の編集者より選定されて査読を行う
  • 論文を掲載するかどうかは、雑誌の編集者によって決定される
  • 査読つき論文の方が査読なしの論文よりも高く評価される

 

参考文献

Wikipedia 査読

SOUBUN.COM 査読付き論文とは?探し方や見分け方についても紹介

editage insights 査読(ピアレビュー)とはなにか?

Wikipedia 出版後査読

 

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