研究室のセミナーで「論文紹介」の担当に自分の名前があったときは憂鬱ですよね。
どうしたら良いんだろうと悩んでこのページを読んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、なんで論文紹介をするのか?から論文紹介をするために準備しておくべきことをまとめていきます。(あくまで個人的な見解です)
抄読会や論文セミナーと呼ぶ研究室もありますが、この記事では「論文紹介」で統一します。
なんで論文紹介をするの?
「論文紹介」とは、自分で論文を選び、読んで、研究室の人たちにわかりやすく発表する場です。
特に、大学生、修士の学生さんにとっては英語の論文を読んで紹介するなんて辛すぎると思われるかと思います。
毎週のように行われる論文紹介。
なぜ論文紹介をするのでしょう?
それは、発表する人にもそれを聞く人にとってもメリットは大きいからです。
発表する人にとってのメリットってなんでしょうか?
- 「研究すること」への理解が深まる
- プレゼン力があがる
の2つではないかと個人的には思っています。
たった1本の論文ですが、その論文の中には著者たちの努力と最先端の知識が詰まっているのです。
聞く側のメリットはこちらの記事をご覧ください。
「研究すること」への理解が深まる
論文紹介では、1本の論文を研究室の人にわかりやすく的確に説明する必要があります。
論文内の論理の流れを理解することで、「何を考えて何をするか?」と言った研究をする上で必要な感覚、考え方を学ぶことができます。
また最新の実験手法、実験に対する考え方を仕入れることもできます。
(遺伝子発現の解析手法がノーザンブロットからqPCRに置き換わったように、実験手法はアップデートされ続けているのです)
さらに「人にわかりやすく的確に説明する」ためには、論文に書かれていることだけではなく、研究の背景知識、実験の知識、専門用語の知識、研究の周辺知識などを仕入れておく必要があります。
これだけでもかなりの勉強になるはずです。
プレゼン力が上がる
プレゼンテーションをする能力、プレゼン力は高校や大学の座学ではなかなか身につくものではありません。
研究室の「論文紹介」で、1つの論理の流れをわかりやすく制限時間内に説明する練習をすることでプレゼン力が上がります。
論文紹介のために準備しておくべきこと
論文紹介をすることになったら、少なくとも1ヶ月前からは動き出しておきましょう。
もし余裕があるなら2ヶ月前から準備できればなおさら良いです。
大まかなステップとしては、
- 論文を探す(指導教官と相談)
- 論文を読む
- 発表資料の準備
- 発表練習
の4段階で見ていきましょう。
1. 論文を探す
意外と労力を使うのが、紹介する論文を探すこと。
最初のうちは「この論文はどうか?」と指導教官が持ってきてくれる場合もあります。
指導教官が持ってくる論文は、自分の研究分野で重要な論文である場合が多いのでその時はその論文を死ぬほど読んで勉強しましょう。
自分で探す場合は、Webツールを使って自分の興味がある「キーワード」を入力して検索します。
論文を探すツールとしては、PubMedやGoogleScholarが一般的です。
「論文紹介」のときに発表するのは「原著論文」が基本です。
紹介する論文は下の3つの軸を持って探すと良いかなと思います。
・ Abstractを読んで「面白そう」だと思うか?
→ 検索して出てきた論文のAbstractを翻訳ツールで訳して大体の概要を把握する(翻訳ツールとしてはdeepLがおすすめ)。
・ ある程度のインパクトがある論文か?
→ 特にNature、Science、Cellなどの有名雑誌やその姉妹誌に掲載されている論文はそれなりのクオリティが保証されている気がします。インパクトファクターが10以上の雑誌から論文を選ぶと良いです。
・ 最新の研究か?
→ 論文がPublishされてからできれば半年以内のものが紹介できると良いでしょう。
発表したい論文が決まったら、指導教官に持っていってみましょう。
その時に、なぜその論文を選んだのかと論文の概要をきちんと説明できるようにしておくと良いです。
2. 論文を読む
論文の読み方は人それぞれで、「これ!」という方法がある訳ではありません。
この記事では発表するためにどのように読んだら良いか、個人的な方法をまとめます。
とにかく何回も何回も読むことが大事です。
英語が苦手であれば、概要を把握するために翻訳ツールを頼ってしまいましょう。
- Abstractを翻訳ツールに頼らず英語で読んで理解する
- 翻訳ツールを使いながら全体の流れを掴む
introduction→results (Figure legendも)→discussion→materials and methods
(翻訳ツールは誤訳もかなり含まれていることを頭に入れておきましょう)
ここはスピード勝負なので翻訳ツールに頼ってしまって構いません
出力された日本語をWordファイルにまとめてしまっても良いかと思います - 一つ一つのパートに分けてじっくりと英語の文を読む
わからない単語は印刷した論文に書き込み、丁寧に英語で読んで行きます
ここで「わからない」を残さないことがポイント!
単語、実験系はきちんと調べておきましょう - 論文内の論理関係を把握する
自分で声を出しながら「〇〇という問題が有って、解決しようと△△を行い、××という結果を得ました、ここから□□ということが考えられます。」と言った論理関係を説明できるようにしていきます
場合によってはSupplementary Figureも見てみましょう
ここでは、「自分で説明できる」というのがポイントです - 論文の背景知識、新規性を押さえる
論文を理解する上で必要な背景の知識は必ず仕入れておきましょう
この論文のどこが新しいのか?なぜその雑誌に掲載されたのか?この論文に足りないところは何か?を押さえられるとかなりポイントが高いです
さらに言えば、周辺の研究も調べてその論文の立ち位置を把握できると完璧です
3. 発表資料の準備
『2. 論文を読む』の7割から8割できてきたら、発表資料を作ります。
研究室によって、紙媒体で配布するところやスライドを用意するところがあるかと思います。
ここではスライドで発表資料の準備をするときに気をつけた方が良いことをまとめます。
実際に発表するスライドの流れと、スライドを作る順番は違う方が良いです。
スライドの流れ
・タイトルと著者名、論文基本情報(雑誌名、発行日、DOIなど)
・論文の概要
・背景知識
・この論文の目的
・Resultの説明
・Discussion
まずは、流れを作るためにスライドにタイトルや何を書くかをざっくり書いて大体何枚くらいになるのかを見えるようにしておきます。
次にスライドの中身を書き込んで作っていきます。
スライドを作る順番
・タイトルと著者名、論文基本情報(雑誌名、発行日、DOIなど)
・論文の概要
・この論文の目的
・Resultの説明
・背景知識
・Discussion
として、とにかくRsultのスライドを先に作って筆者たちが何を言いたいのかを把握してから、その説明に必要な背景知識やDiscussionを埋めていくようにしましょう。
図の説明の際はスクショだとスクリーンで拡大した時にボケた画像になるので、論文のページから直接ダウンロードしましょう。
スライドの作り方はさまざまな流派があるようです。
最初は、
・フォントが統一されているか?
・使われている色は3色以内か?
くらいを気をつけていれば大丈夫です。
わざわざスライドを作る必要はありませんが、なぜこの論文を紹介するのか?を説明できると導入としてはバッチリです。
4. 発表練習
時間に追われて、スライドを作って満足してしまい発表練習はなかなかできないかもしれません。
プレゼンテーションが上手くなるためには、練習は大事です。
少なくとも、発表原稿(このスライドの時に何を言うか)を作って、1回でも良いので声を出して説明する時間を必ず作りましょう。
練習の時に大事なのは、
・論文のストーリーを説明できているか?
・決められた時間内に発表できそうか?
です。
「論文紹介」では、自分が論文筆者に代わって説明します。
筆者と同じ立場に立って説明できているかを確認しましょう。
決められた時間内に発表するのもプレゼンテーションの練習です。
繰り返しの表現が多かったり、論理の流れで割愛しても良い情報をダラダラと説明するのは時間の無駄です。
必要な情報とそうではない情報をメリハリをつけて説明できるようにしましょう。