生命科学系の学生さんだったら必ずといって良いほどやるのが「クローニング」ではないでしょうか?
「クローニング」を始める前に、できるようになっておかなければいけないこと、それが「プラスミドマップ」を読むことです。
「クローニング」をするにしても、増やしたい遺伝子をのせるベクターがどんな構造をしていて、どう言う手順を踏んだら遺伝子の挿入ができるのか?効率よく発現させたい場合はどんなベクターを選べば良いのか?知っておかなければいけません。
今回は「クローニング」で最も広く使われる、プラスミドのマップの見方を簡単にまとめておきます。
「クローニングってなに?」という方はこちらの記事もご覧ください。
「プラスミド」ってなに?
プラスミドの基本骨格
そもそも、プラスミドというのは大腸菌や酵母などの細菌が持っている宿主ゲノムと独立して自立複製する環状二本鎖DNAです。
「クローニング」に使用されるプラスミドは、複製開始点、抗生物質耐性遺伝子、制限酵素切断部位などが乗っています。
プラスミドの名前を検索すれば大手のメーカーやAddgeneなどで手に入れることができます。
プラスミドマップからわかること
下に、クローニングベクターの基本のキであるpBR322とpUC19のプラスミドマップを示しています。
プラスミドマップからわかることは、
- プラスミドの名前
- 塩基数
- 複製開始点の種類(レプリコンの種類)
- 制限酵素サイト
- プロモーターの種類
- 薬剤耐性遺伝子の種類
- 遺伝子の向き(プロモーターの向き)
- タグの種類、レポーター遺伝子の情報
です。
図2から読み取れるのは、①、②、③、④、⑥、⑦、⑧ですね。(プロモーターの情報が入っていません)
プラスミドマップによっては、プロモーター情報が載っていなかったりするのですが、自分で実験を組み立てたり、申請書を書く場合には必ず必要になってくる情報です。
特に、プロモーターの向きと遺伝子の向きを揃えておかないと遺伝子発現されないので注意が必要です。
プラスミドマップで見ておきたいポイント
プラスミドマップを見るときに、見ておきたいポイントをまとめておきます。
薬剤耐性遺伝子の種類
「クローニング」をしている人ならば、必ずと行っても良いほど見ているとは思います。
プラスミドベクターで使用される代表的な薬剤耐性遺伝子をまとめておきましょう。
pBR322の場合は、テトラサイクリン耐性遺伝子内にある"HindIII"と"BamHI"サイトを使う、もしくは"SalI"で切断して遺伝子を挿入します。
こうすることでテトラサイクリン耐性遺伝子が潰れてしまい、作製したプラスミドを持つ宿主(大腸菌)はテトラサイクリン耐性を持たなくなってしまいます。
目的遺伝子が挿入されたものを得るためには、アンピシリン耐性は持つがテトラサイクリン耐性を持たないクローンを拾ってくれば良いのです(ネガティブ選択)。
複製開始点の種類
プラスミドマップ自体に書かれていることは少ない、複製開始点の種類。
データシートなどをきちんと読むと書いてある場合が多いです。
複製開始点はプラスミドの複製様式、コピー数を決める大事な部位です。
たくさんクローンを取りたいのか?そうではないのか?自分の実験計画と比較して決める必要があります。
よく使用されるプラスミドの複製開始点の種類を以下にまとめておきます。
遺伝子の向き
「クローニング」をするときに見落としがちなのが、遺伝子の向き。
逆に挿入してしまうと、挿入はできているのに目的の遺伝子が発現していないことがあります。
遺伝子が転写される向きはプロモーターの向きと一致するので、プロモーターの向きを把握しておく必要があります。
ApeやGeneSnap viewerなどで作製されたプラスミドマップにはプロモーターの向きが記載されています。
ApEでプラスミドマップを取得する
最後に、無料ソフトのApEを使ってプラスミドマップを取得してみましょう。
今回は、例としてpBR322を取り上げます。
手順としては、
- NCBIのサイトにアクセスする
- pBR322のベクター情報を検索する
- ベクター情報を".gb"ファイルでダウンロードする
- ApEで開く
少しごちゃごちゃしていますが、プラスミドマップを取得することができました。
ApEのインストール方法や、プラスミドの設計の仕方、シークエンスの見方などはこちらの記事にまとめます。
クローニングするなら知っておきたいプラスミドマップの見方 まとめ
プラスミドマップの見方をまとめましょう。
- プラスミドマップから得られる情報は様々
- 特に注意しておくべきは、薬剤耐性遺伝子の種類・複製開始点の種類・遺伝子の向き
- 一般的なクローニングベクターであればNCBIのサイトで取得できる
- ApEやSnapgene viewerなどでクローニングベクターの編集ができる