生命科学系なら必ずやる「クローニング」って何?
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生命科学系の研究室に所属しているなら、分野を問わず必ずと言っても良いほどやるのが「クローニング」ではないでしょうか?

必ずと言っても良いほどやるのに、研究室に配属された学生さんにほとんど説明されなかったりもするのです。

(研究室にいる人にとっては、あまりにも当たり前のことだからなのかも...)

そこで「クローニングってなんだ?!」と戸惑っている、研究室に配属されたばかりの学生さんへ、「クローニングとは?」を簡単にまとめていこうと思います。

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クローニングとは?

クローニング(cloning)は、英語のスペルの通り「cloneを作ること」。

生命科学での「clone」は「同じ遺伝子を持つもの」のことを指します。

研究室レベルの「クローニング」は、遺伝子の働き・機能を解析して、利用するために「特定の遺伝子を増やして単離する」ことを言います。

一般的には、作製したDNAを大腸菌などのベクター(DNAを乗せる乗り物)に導入して増幅します。

 

研究室で、どんな時に「クローニング」をするのでしょう?

例えば...

目的の遺伝子を発現する(発現させないようにした)トランスジェニックマウスを作る

細胞に解析したい遺伝子を(過剰に)発現させたい

特定のタンパク質を多量に精製したい

などなど。

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クローニングに使う「ベクター」とは?

大腸菌にDNAを導入するベクターの種類としては、プラスミドとバクテリオファージがあります。

それぞれについてどんな特徴・違いがあるのか見ていきましょう。

プラスミドとは?

大腸菌や酵母などの細菌が持っている、宿主ゲノムと独立して自律複製する小さい(数千塩基対程度)環状二本鎖DNA。

プラスミドには生存していくために大切な遺伝子乗っておらず、環境が変化した時にそれに適応するための遺伝子(接合に関わる遺伝子)や病原性を発するための遺伝子が自律的に発現されます。

 

「クローニング」などの遺伝子組換え実験で使うプラスミドには、

・複製開始点

・抗生物質耐性遺伝子

・制限酵素切断部位(外部の遺伝子を挿入する部位・クローニング部位)

があります。

最も一般的に使われるベクターで、プラスミドに挿入したい外部の遺伝子を乗せて、大腸菌内に導入(形質転換)し、大腸菌を培養することで目的の遺伝子が大量に得られるようになります。

 

図1のような図をプラスミドマップと言います。

プラスミドマップの読み方については、こちらの記事をご覧ください。

バクテリオファージとは?

大腸菌などの細菌に感染するウィルス。

基本骨格は、タンパク質でできた殻と核酸(2本鎖DNA)だけとかなりシンプルな構造を持つ。

バクテリオファージに感染された細胞は細胞膜が破壊され(溶菌)、まるで食べ尽くされたかのようにバラバラになる。(培養皿上でファージに食べ尽くされた後のことを「プラーク」と言います)

 

バクテリオファージには、感染して遺伝子が複製されるとすぐに細胞膜を破壊してバラバラにする「溶菌性ファージ」と、感染した細胞のゲノムに自分のゲノムを組み込み増幅させてから溶菌させる「溶原性ファージ」があります。

「溶菌性ファージ」の例としてはT4ファージなどの頭文字にTがつくシリーズ、「溶原性ファージ」の例としてはλファージ、M13ファージなどが挙げられます。

 

「クローニング」には、溶原性ファージであるλファージやM13ファージなどが使用されます。

バクテリオファージは約50 kbp程度の直鎖状の二本鎖DNA(M13は単鎖)をもち、宿主に感染すると環状二本鎖DNAとなったり、宿主のゲノムに組み込まれたりして、自分の遺伝子を複製させます。

12塩基対からなる一本鎖のcos部位が、宿主内で自己複製するために重要な役割を果たします。

このcos部位だけを残して、目的遺伝子を挿入してファージ内に取り込ませる、「コスミド」というベクターもあります。

 

ファージタンパク質と目的遺伝子を混ぜるだけで、ファージ内にDNAが取り込まれます。

作製したファージを大腸菌に感染させて培養すれば、目的遺伝子が大量に得られるのです。

プラスミドとバクテリオファージの特徴

「ベクター」には大きく分けて2種類あることはご紹介しました。

「プラスミド」と「バクテリオファージ」はどのように使い分けたら良いのか?

それぞれの特徴とともにまとめておきます。

プラスミドベクターの主な用途は、ライブラリー作製以外の様々なものといったところでしょうか。

導入できる遺伝子の長さが短いので注意が必要です。

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クローニングの流れ

生命科学系の実験でよく使われる「プラスミド」を例に、「クローニング」の全体の流れを押さえておきましょう。

大きな手順としては、

  1. ベクターを調製する(実験の目的に合ったベクターを探す)
  2. 目的遺伝子を調製する
  3. ベクターの制限酵素処理・ライゲーション
  4. 大腸菌に作製したプラスミドを導入する(形質転換)
  5. コロニーピックアップ
  6. クローニングが目的通りに行われているか確認(サブクローニング)
  7. 大腸菌の拡大培養

となります。

かなり手順が多いことがわかりますね。長いと1週間くらいかかったりします。

詳しい「クローニングの手順」に関しては別の記事にまとめていますので、ご覧ください。

生命科学系なら必ずやる「クローニング」って何? まとめ

生命科学系研究室で行われる「クローニング」についてまとめていきましょう。

  • 遺伝子を解析するために、目的遺伝子を増やして単離する方法
  • 一般的には大腸菌に目的遺伝子を導入して増幅させる
  • 大腸菌に目的遺伝子を導入するベクターにはプラスミドとバクテリオファージがある
  • 自分の実験の目的にあったベクターを探す必要がある
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